改正法の施行日は,原則として,令和2(2020)年4月1日とされています。
当事者の予測可能性の観点から,基本的には,施行日前に締結された契約や施行日前に生じた債権債務には,改正前の民法が適用されます。
この記事では,施行日前に締結された契約について,施行日以後に更新された場合,改正前の民法と改正後の民法のどちらが適用されるのか,について解説したいと思います。
契約の更新には,
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当事者間の合意に基づくもの
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法律の規定に基づくもの
があると考えられます。
更新合意の時点で改正法が適用されることへの期待があるといえるので,更新後の契約には改正後の民法が適用されます。
* たとえば,賃貸借契約について合意更新がされる場合,賃貸借に関する規定は改正後の民法が適用されます。
* 賃貸借に付随して保証契約が締結されていることがありますが,保証に関する規定の適用は保証契約の締結時を基準とします。したがって,賃貸借契約の合意更新に伴って,保証契約が新たに締結された場合や,保証契約が合意によって更新された場合は,改正後の民法が適用されます。
一方,賃貸借契約の更新に伴い保証契約が新たに締結も更新もされない場合もあります。もともと,保証契約は,賃貸借契約が合意更新された場合を含めてその契約から生じる賃借人の債務を保証することを目的とすると解されているためです。このような場合は,保証には改正前の民法が適用されます。
法律の規定に基づいて更新される場合とは,たとえば,
(A)賃貸借期間満了後も賃借人が賃借物の使用・収益を継続し,賃貸人がこれに異議を述べない場合,同一条件でさらに賃貸借をしたものと推定されます(民法619条1項)。
→この規定は当事者間の目次の合意が根拠とされていますので,そうであれば施行日後に合意があったのと同様,改正法が適用されるものと考えられます。
(B)借地借家法の法定更新(借地借家法26条)
- 契約の更新をしない旨の通知をしたが,正当事由(同法28条)がないために更新される場合
- 契約の更新をしない旨の通知をしなかったことによって更新される場合
→このときの更新は当事者の意思に基づかないものですので,当事者に改正後民法が適用されるとの期待があるとは言い難く,更新後も改正前の民法が適用されることになると解されています。