算定表による養育費を支払えば,それ以上の額を払う必要はないのか?
標準算定方式による養育費には教育費も含まれているのですが,算定表が考慮している学校教育費は,公立中学・公立高校の学校教育費相当額を考慮しているものなので,大学やそれ以外の教育費(たとえば私立中学,私立高校へ通った場合の学費等)は含まれていません。
そのため,算定表が想定している学校教育費を超えて,教育費の支出がある場合は,権利者は,その超えた部分の負担を義務者に求めることになり,事情によって,支払う必要がある場合が出てきます。
大学の学費は請求できるか?
子が大学に進学する場合の学費等の費用については,必ずしも義務者が当然に負担すべきといえるものではなく,
- 大学進学を了解していたか,
- 了解していなかったとしても,義務者の地位,学歴,収入等を考慮したうえで,不合理でない場合
は負担すべきものと考えられています。
一般に養育費は20歳までですが,このような場合は大学卒業まで未成熟子として扱われる(=養育費の支払い義務がある)ことが多いです。
請求できる額はどのように決めるのか?
もともと算定表による養育費には,公立高校の教育費相当額が考慮されていますので,実際にかかる大学の費用から,この額を控除した額の分担が問題になるといえます。
具体的には,
- 算定表において考慮されている学校教育費(子が15歳以上の場合)の具体的な額は25万9342円(月額2万1612円)ですので,実際の大学の学費からこの額を控除したうえで,義務者と権利者の基礎収入で按分する方法があります。
- 生活費指数のうち,教育費の占める割合(生活費指数85に対して25)を用いる方法があり,子の生活費の額(=義務者の基礎収入×(子の指数の合計/義務者の指数+子の指数の合計))×25/85 が算定表において考慮済みであるので,実際の大学の学費からこの額を引いて,義務者と権利者の基礎収入で按分する方法もあります。
また,子がアルバイトをしていたり,奨学金を得ている場合は,その事情が考慮されますし,
もともと大学の費用を権利者・義務者双方の収入で賄うことが難しいと考えられる場合は,その費用の一部をアルバイト収入や奨学金で賄うことが予定されていたものとして,これらの収入があることを前提として分担額を決めることもあります。
当事者(権利者・義務者)双方の収入や,学歴,子の収入(奨学金を含む)など,個別に考慮される事情が異なり,当事者の考え方や義務者の負担の意向も様々ですので,事案によって解決には差が出てくるといえます。
双方の収入と算定表で大体いくら,と出ないので,調停の場では,粘り強く話し合うことが必要なことが多くなります。