借地法と借地借家法

どう違うのか

旧法(借地法)は,本来立場の弱い借地人の権利を保護するために作られたもので,借地人の権利が非常に強くなっています。地主は一度土地を貸してしまうとその土地を取り戻すのは非常に困難になってしまうと言われていました。それを緩和するために新借地借家法が制定されました。

契約した時期により適用される法律が違う

平成4年8月1日借地借家法が新たに施行されました(旧法である借地法,借家法,建物保護法は廃止されました)。借地借家法の適用があるのは平成4年8月1日以降に契約した借地権です。

内容の違い

借地借家法により,旧借地法の内容はどのように変わったのでしょうか。
主なものは以下のとおりです。

存続期間の一本化

旧法は,堅固建物と非堅固建物を区別して,存続期間・更新期間を定めていましたが,改正により,建物の種類よる区別はなくなりました

借地借家法では,普通借地権の存続期間は一律30年(ただし,当事者が30年以上の期間を定めた場合はその期間)とし,更新後の期間は,最初の更新後の期間は20年(ただし,当事者がこれより長い期間を定めた場合はその期間),その後10年(ただし,当事者がこれより長い期間を定めた場合はその期間)とされました。

*旧法下よりも更新時期が早くやってくることになりますので,正当事由の判断を検討する機会が増えることになります。

定期借地権制度の創設

一定期間が満了した場合に,更新既定の適用を受けない定期借地権の制度が新設されました。3種類あります。

  • 一般定期借地権(借地借家法22条)
  • 建物譲渡特約付定期借地権(同24条)
  • 事業用定期借地権(同23条)

正当事由の具体化・明確化

借地契約の更新拒絶に正当事由が必要であることは旧法と変わりませんが,借地借家法では,正当事由の判断要素をより具体的に,明確化しました(6条)。すなわち,

  1. 地主と借地人が土地の使用を必要とする事情
  2. 借地に関する従前の経過
  3. 土地の利用状況
  4. 財産上の給付の申し出

を考慮して,正当事由の有無を判断することとされました。
*ただ,これらの判断要素はいずれも旧法下における裁判での取り扱いを明らかにしたものにすぎませんので,正当事由の実質は基本的には変わらないといえます。

地代増減請求事件の調停前置主義の採用

地代をめぐる紛争については,裁判の前に調停の申立てをしなければならないことになりました(民事調停法24条の2)。

建物の朽廃による借地権の消滅

旧法では,法定存続期間前に建物が朽廃した場合には借地権は当然に消滅する旨定められていましたが(旧借地法2条1項但書),借地借家法ではこの朽廃による借地権の消滅制度は廃止されました。

建物の再築による期間の延長(当初の更新期間中の建物滅失)

旧借地法では,残存期間を超える建物を再築した場合において,地主が異議を述べない限りは,堅固な建物は滅失の日から30年間,非堅固な建物は20年間,存続期間が延長されます(旧法7条)。
これに対し,借地借家法の普通借地権は,残存期間を超えて存続する建物を再築した場合には,その再築に地主の承諾があったときは,(堅固・非堅固の別なく一律)20年間存続期間が延長されます(7条1項)。*承諾がなかった場合は期間は延長されません。

更新後の建物滅失による解約

旧借地法では,更新後の建物滅失において借地契約を解約できるとする制度はありません。
これに対し借地借家法では,更新後に建物が滅失した場合,

  • 借地人は借地契約の解約申入れができます。
  • 残存期間を超えて存続する建物の再築に地主の承諾ない場合,地主は借地契約の解約申入れができます。

いずれも,解約申入れの日から3か月経過で借地権消滅は消滅します(8条1~3項)。

*ただし,地主が承諾しない場合に借地人が裁判所に地主の承諾に代わる許可を求める制度があります(18条1項)。

直前の更新時期が平成4年8月1日以降の場合,借地借家法が適用されるのか?

借地借家法が施行された後に契約更新を行っても,適用される法律が旧法(借地法)から新法(借地借家法)に自動的に切り替わることはありません。土地賃貸借契約の元々の締結日平成4年8月1日より前であれば,それは旧法に基づいた借地権であり,更新の時期が同日以後であっても借地法が適用されます

更新時に借地借家法が適用される契約へ変更できるのか?

契約を借地借家法の適用される契約に切り替えることは,旧法での契約を地主と借地人との合意によって解除し,新たに新法(借地借家法)のもとで契約を結びなおす方法によれば可能でしょう。

ただ,借地借家法のものとでは,旧借地法と比べ,借地人は将来的には存続期間を短縮されることになり,地主が更新拒絶の主張をする機会が増えます。増改築の制限も強化されており,借地法のもとでの契約を借地借家法の適用される契約に切り替えることで,借地人にメリットはありません。したがって,借地人が応じることはまずないものと思われます。借地人が応じなければ,旧法による契約が存続することになります。

借地人が地主の言われるがままに応じてしまったような場合でも,旧法の一部は強行法規であり,これに反する特約で借地人に不利益なものは無効とされている(借地法第11条)こととの関係で,そのような合意は借地人に不利な特約として無効とされ,新法の適用が否定される場合があります。

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