借地借家法【借地】~概説

適用範囲

建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権を「借地権」といい,借地権について借地借家法が適用されます。

  • 地上権というのは,他人の土地において工作物または竹木を所有するために,その土地を使用する権利をいいます(民法265条)。地上権は物権,賃借権は債権です。
  • 建物所有を目的としない地上権または土地賃借権には,借地借家法は適用されません。この場合は民法が適用されます。

借地権を有する者を「借地権者」といい,借地権者に対して借地権を設定している者を「借地権設定者」といいます。つまり,土地を借りている人が借地権者,貸している人(地主)が借地権設定者です。

存続期間

借地権の存続期間は最低30年です(借地借家法3条本文)。

  • 契約で30年より長い期間を定めた場合は,契約で定めた期間が存続期間になります(同条但書)。
  • 契約でこれより短い期間(30年未満)を定めても,存続期間は30年になります。
  • 契約で存続期間を定めなかった場合も30年になります。

*民法上,賃貸借の存続期間の最長は50年とされています(民法604条)。

契約の更新

契約の更新

借地契約の更新方法には,「合意更新」「請求更新」「法定更新」の3つあります。なお,請求更新と法定更新は,借地上に建物が存在する場合に限られます。

  1. 合意更新:当事者で合意して更新する場合です。
  2. 請求更新借地権者が更新を請求したときは,建物がある場合に限り,契約を更新したものとみなされます(借5条1項)。
    ただし,借地権設定者が正当事由をもって,遅滞なく異議を述べたときは更新されません(同条1項但書,6条)。
  3. 法定更新存続期間後も借地権者が土地の使用を継続するときは,建物がある場合に限り,契約を更新したものとみなされます(借5条2項)。
    ただし,借地権設定者が正当事由をもって,遅滞なく異議を述べたときは更新されません。

更新後の期間

更新後の存続期間は,最初の更新のときと2回目以降の更新のときで異なります(借4条)。

(1)最初の更新→最短20年,契約でこれより長い期間を定めたときはその期間

(2)2回目以降の更新→最短10年,契約でこれより長い期間を定めたときはその期間

借地権の対抗力

借地上に借地権者が,自己を所有者として登記されている建物を所有していれば(借地権の登記がなくても)第三者に対抗することができるとされています(借10条1項)。

*登記している建物が滅失してしまった場合でも,一定の内容をその土地の見やすい場所に掲示することで,滅失日から2年経過するまでは,借地権の対抗力を維持することができます(同条2項)。

建物買取請求権

借地権の存続期間が満了した場合で,借地契約の更新がないときは,借地権者は借地権設定者に対して,建物を時価で買い取ることを請求することができます(建物買取請求権,借13条1項)。

*民法の規定によると,借地契約が終了した場合は,借地権者は原状回復義務の履行として,建物を取り壊して土地を更地にして返さなければなりません。しかし,既にある建物を壊すのは社会経済的な不利益が大きいので,借地借家法ではこのような規定が定められています。

ただし,借地権者の債務不履行(借地権者が地代を払わなかった等)により契約が解除された場合には,借地権者に建物買取請求権は認められません

建物の滅失と再築

借地権の存続期間が満了する前に建物が滅失してしまい,残っている借地権の存続期間を超えて存続すべき建物を再築する場合,借地権の存続期間が延長されるかどうかが問題になります。

借地権の存続期間が延長されるかどうかは,建物が滅失した時期と,新たに建物を築造することについて借地権設定者の承諾があるかどうかによって異なります。

当初の存続期間中に滅失した場合

■残存期間を超えて存続すべき建物の再築について借地権設定者の承諾がある場合(借7条1項)

①承諾日②建物の再築日のうち,いずれか早い日から20年間存続します。ただし,残存期間が20年よりも長い場合や,契約で20年よりも長い期間を定めた場合は,その期間存続します(借7条1項)。

  • 借地権者が借地権設定者に対し,残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合に,借地権設定者がその通知を受けてから2カ月以内に異議を述べなかったときは,承諾があったものとみなされます(同条2項)。

■再築について借地権設定者の承諾がない場合・遅滞なく異議が出された場合

→借地権の期間は延長しません。つまり,承諾がなくとも借地権の残存期間を超えて存続すべき建物の再築は可能ですが,従来どおりの期間の借地契約が存続しますので,従来の借地期間満了時に,更新の可否ないし借地権設定者からの解約申入れに正当事由があるかどうかが争点となります。

更新後に滅失した場合

■残存期間を超えて存続すべき建物の再築について借地権設定者の承諾がある場合

→①承諾日と②建物の再築日のうち,いずれか早い日から20年間存続します。ただし,残存期間が20年よりも長い場合や,契約で20年よりも長い期間を定めた場合は,その期間存続します。

■再築について借地権設定者の承諾がない場合は

→借地権設定者は地上権消滅請求または土地の賃貸借の解約申し入れをすることができ,請求・解約の申入れから3ヶ月経過すると借地権は消滅します(借8条2項3項)。

つまり,承諾がない場合は借地権の残存期間を超えて存続すべき建物の再築はできないということになります。

ただし,一定の場合には借地権者は,裁判所に,借地権設定者の承諾に代わる許可を求めることができます(借18条1項)。この許可があれば再築できるということになりますが,裁判所は当事者間の衡平を考えて,延長すべき借地期間を定めたり,借地条件の変更(地代の増額等)をしたり,財産上の給付(承諾料の支払い)を命じたりすることができるとされています。

*更新前と異なり,通知・みなし承諾の規定はありません。

借地上の建物を譲渡等する場合

借地上の建物を譲渡する場合の,土地賃借権の譲渡・転貸

借地権者が,借地上の建物を譲渡する場合,建物の譲渡は自由にできますが,その建物は借地権がなければ存続できませんので,借地権も譲渡するか,借地を転貸する必要があります。

借地権が地上権の場合には,借地権設定者の承諾なしに地上権の譲渡や土地の転貸をすることができますが,借地権が土地賃借権の場合には,借地権の譲渡や借地権の転貸をするには借地権設定者の承諾が必要になります。

そのため,借地権設定者が承諾をしないと,事実上,借地権者は建物を譲渡することができなくなってしまいます。これだと借地権者に酷なので,借地借家法では,借地権者の申立てにより裁判所が借地権設定者の承諾に代わる許可を与える制度が法定されています(借19条1項)。

借地上の建物を第三者が取得した場合の建物買取請求

第三者が,借地権者から借地上の建物を取得した場合に,借地権設定者が土地賃借権の譲渡または借地の転貸を承諾しないときは,第三者は,借地権設定者に対して,時価で建物を買い取るべきことを請求できます(借14条)。

借地上の建物を譲渡するは,裁判所の許可を得ることにより,第三者は土地賃借権を取得することができます。
借地上の建物を譲渡した,借地権設定者が土地賃借権の譲渡・借地の転貸を承諾しない場合は,建物の買い取りを請求できます。

定期借地権等

(一般)定期借地権

存続期間を50年以上とする借地権を設定する場合には,以下の特約を定めることができます。
①契約の更新がないこと
②建物滅失時における建物の再築による存続期間の延長がないこと
③建物買取請求権がないこと
なお,上記の特約を定めるときは,書面(公正証書でなくてもよい)で行う必要があります。
(借22条)

事業用定期借地権

もっぱら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く)の所有を目的とし,存続期間を10年以上50年未満とする借地権をいいます。

このうち,10年以上30年未満とする事業用定期借地権には,
①契約の更新
②建物の再築による存続期間の延長
③建物買取請求権
がありません。

存続期間を30年以上50年未満とする事業用定期借地権には,①~③がない旨の特約を定めることができます。

事業用定期借地権の設定は,公正証書行わなければなりません。
(借23条)

建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権とは,借地権を消滅させるため,その設定後30年以上契約した日に,借地上の建物を借地権設定者(地主)に相当の対価で譲渡する旨の特約を定めた借地権をいいます。この特約は書面で行う必要はありません(口頭でも可)。
(借24条)

一時使用目的の借地権

一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には,普通借地権に関する規定(存続期間,更新,建物買取請求権,建物の滅失と再築)や定期借地権等の規定は適用されません。
(借25条)

 

✳︎関連記事はこちら

タイトルとURLをコピーしました