無効及び取消し関する改正は,原状回復義務に関するものと,追認に関する規定の2つあります。
原状回復義務
改正前は,無効な行為(取消しの結果としての無効を含む)に基づいて給付がされた場合に,その後当事者がどのような義務を果たすべきか,条文に規定が置かれていませんでした。*不当利得の一般規定(民法703条・704条)を適用したりしていました。
改正法は,「無効な行為(取消しの結果としての無効を含む)に基づく債務の履行として給付を受けた者は,相手方を原状に復させる義務を負う」と定めて,無効な行為の効果を原状回復義務と規定しました(民法121条の2第1項)。
もっとも,これには2つの例外があります。
1つは,「無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者」は,同人が給付を受けた時点でその行為が無効であったorその行為を取り消すことができるものであることを知らなかったときは,「現に利益を受けている限度」で返還すればよい(民法121条の2第2項)ものとされていることです。
もう1つの例外は,「行為の時に意思能力を有しなかった者」と「制限行為能力者」も,「現に利益を受けている限度」で返還すればよい(民法121条の2第3項)とされていることです。
*現に利益を受けている限度で返還すればよいということは,利得が消滅してしまった場合は,その旨を主張すればよいことになります。
追認
追認に関しては,従前の判例と解釈が明文化されました。
*改正前は,追認は,取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ効力を生じないものと定められていましたが,判例は,取消権を有することを知った後にすることも必要としていました。
改正法では,後者も明文化され,
追認は,
◎ 取消しの原因となっていた状況が消滅
かつ
◎ 取消権を有することを知った後
にしなければその効力を生じないと定められました(民法124条第1項)。