前婚の子がいる場合の後婚の子の養育費

養育費の計算方法(基本的な考え方)はこちら

前婚の子がいる場合の後婚の子の養育費の計算

元夫が再婚した場合に請求できる養育費の額②の記事での事例は,前妻が請求する場合でしたが,本記事では請求者が後妻側になっただけで,考え方と計算方法は同じです。
(登場人物)
X後妻・収入あり),後妻との間のA(5歳)・B(2歳)
Y元夫),
Z前妻・収入あり),前妻との間のC(16歳)

X(後妻)が,Y(元夫)に対し,ABの養育費として請求できる額は,いくらになるでしょうか。

Xの基礎収入を100万円,Zの基礎収入を130万円,の基礎収入を250万円と仮定します。

前妻(Z)との間の子(C)に対しては(だけではなく)前妻(Z)も扶養義務を有していますので,C生活費指数についてはZとの収入比によって按分します。
(ただし,指数を変えない扱いをする裁判所もあるようです。指数を変えるとなると、後妻の養育費請求の判断の中で前妻の収入額まで必要になってしまいますね。)

  • Cの按分した生活費指数85×(250250130)≒55.9
  • AB生活費250×{(6262)/(100626255.9)}≒110.8万円
  • が分担するAB養育費=110.8×(250100250)≒79.1万円(年額)
  • 79.1万円÷12≒6.6万円(月額)

に対し,ABの養育費として請求できる額は,月額約6.6万円となります。

元夫が前妻に養育費を払っている場合はどうか

元夫が,既に前妻に養育費を支払っている場合はどうでしょうか。
たとえば,元夫(Y)が,前妻(Z)に,Cの養育費として月額5万円を支払っていたような場合です。

この場合,義務者=元夫()が前妻(Z)に支払っている養育費の額を元夫()の基礎収入から控除して求めた額を元夫()の修正基礎収入として,後妻との間の子(AB)の養育費を計算する考え方があります。

つまり,は,Zに月額5万円をCの養育費として支払っているので,基礎収入の250万円から,60万円(月額5万円×12か月)を引いた,190万円の(修正)基礎収入とします。

  • AB生活費190×{62+62/(100+62+62)}≒105.2万円
  • が分担するAB養育費=105.2×(190100190)≒68.9万円(年額)
  • 68.9万円÷12≒5.7万円(月額)

に対し,ABの養育費として請求できる額は,月額約5.7万円となります。

*Zの基礎収入が明らかでないと5万円の養育費が妥当かどうかわかりませんが,Zの収入に見合った額だという前提です。

前婚の子の養育費は減額できないのか

義務者(元夫)が,前婚の子に対して,算定表の基準を大きく上回った養育費を払っている場合は,支払っている養育費の額を義務者の基礎収入から差し引いて義務者の(修正)基礎収入としてしまうと,後婚の子の養育費が不当に低くなってしまうという結果にもなりかねません。

前婚の子に支払っている養育費の額が算定表基準を上回っていても,特段の事情がある場合もありますので(私学の学費を支払っているなど),一概には言えませんが,前婚で養育費の額を合意した後に,婚姻し(後婚),子をもうけたことは,「事情に変更を生じた」(民法880条)ものとして,前婚の養育費の減額請求事由になることがあります。