自然災害で被害を受けた場合の支援制度

令和6年8月30日、台風10号の影響による大雨で二宮町でも葛川が氾濫し、周辺が水没するなどの被害が発生しました。
平塚市、小田原市、秦野市、厚木市、伊勢原市、大磯町、二宮町、中井町、大井町、湯河原町は、同日付で災害救助法の適用となりました。

被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

*神奈川県弁護士会では、令和6年台風第10号に関する臨時無料電話相談を実施しています。
詳細はこちら:https://www.kanaben.or.jp/news/event/2024/610.html

被災した場合に受けられる支援には様々なものがありますが、いざ被災すると、何から手を付けたらよいのか、具体的にどうしたらよいのか、混乱してしまうことが多いので、被災した場合に受けられる支援について、まとめてみたいと思います。
*すべての情報は網羅できません。何をしたらよいか、どんな支援が受けられるのかを調べるときの一助になると幸いです。

あなたがやること

り災証明書を申請する

被災した方はまず、お住いの自治体で、り災証明書を申請してください。
「り災証明書」は、被災したときに、支援金や義援金、税金の減免などの支援を受けるために必要な書類となります。
*災害により建物に被害が生じた場合、被災した市区町村では、国の基準に基づき被害調査を行い、被害の種類や大きさを「全壊/大規模半壊/半壊、全焼/半焼、床上浸水/床下浸水」などの区分で判定します。その判定結果を証明する書類が、「り災証明書」です。
*住宅の損害の程度は、職員が現地調査などを行い認定します。
*住宅の損害程度に応じて、受けられる制度や支援金の金額が異なってくるので、り災証明書の内容は非常に重要なものになってきます。
*り災証明の判定に納得できない場合は、二次調査や再調査を依頼することも可能です。

*り災証明や、保険金の請求に必要となりますので、被災した場合、自宅を片付ける前に、写真や動画を撮影すること忘れないようにしてください。

災害救助法の適用を受けたかどうか確認する

少なくとも、あなたが受けた被害の原因となる自然事象(台風や地震)について、あなたの住まいのある市町村に災害救助法の適用がされているのかどうかを、内閣府のHP、県のHP等で確認してください。迅速な被害の救助が目的のため、災害発生後わりと早い時期に適用される場合は発表があると思います。

災害救助法の適用は、市町村の要請により、都道府県が決定します。適用されると、市町村は、都道府県や国から資金を調達できることになりますので、支援の幅が広がります。災害救助法よる救助は基本現物支給となりますので、どんな支援があるか、自治体のHP等で情報を収集してください。避難所の設置費用や、障害物の除去費、応急仮設住宅も災害救助法にもとづき供与されるものです。日常生活が困難な場合は日用必需品も支給されることがあります。

被災者生活再建支援法によりもらえるお金があります。被災者生活再建支援法の適用の有無も内閣府のHP等で調べることができます。被災者の生活再建のための支援ですので、災害発生から少し時間が経ってから発表されるのが通常のようです。

*支援制度には、もととなる法律(災害救助法や被災者生活再建支援法、災害弔慰金法等)があり、その適用を受けるには要件があります。それぞれについて、適用要件の確認が必要です。

受けられる支援(制度について)

…住むところがない、家を直したい、お金をもらいたい、お金を借りたい、その他

住むところがない

避難所

災害のため自宅で過ごすことが困難になった時、一定の期間、避難生活をする場所です。学校や公民館などが割り当てられることが多いです。

各市町村では、あらかじめ災害時の避難場所を定めています。避難指示が出たときには、速やかに避難場所に移動できるよう、市町村のホームページや、配布しているパンフレットなどで、あらかじめ位置などを確認しておきましょう。

応急仮設住宅(災害救助法)

大規模災害が発生し、災害救助法が適用されることが決定したときに、自治体の裁量で提供されます。
災害により住宅が全壊するなどして居住する住宅を失い、かつ自らの資力では住宅を得ることができない人が、入居を申し込むことができます。
原則として最長で2年間、家賃等公費負担で、継続して入居できます。

壊れた家を直したい

応急修理制度(災害救助法)

自宅の屋根や壁、床などの生活に欠かせない部分を修理する場合、「応急修理制度」を活用すると、修理費用の一部を自治体が負担してくれることがあります。
・半壊以上…70万6000円を限度
・準半壊…34万3000円を限度
制度を利用すると修理期間の仮設住宅の入居資格や公費解体制度の利用資格を失う場合があるので注意が必要です。
災害救助法に基づく制度で、日常生活に必要最小限度の部分を応急的に修理することが目的としたものなので、対象者や救助期間等の要件があります。

お金をもらう

被災者生活再建支援金(被災者生活再建支援法)

被災者生活再建支援金というのは、被災者生活再建支援法に基づいて支給されるもので、住宅の被害程度に応じて支給される基礎支援金と、住宅の再建方法に応じて支給される加算支援金の合計額が支給額となります。基礎支援金と加算支援金の2回に分けて受け取ることができます。

  • 基礎支援金…「全壊」「解体」「長期避難」の場合:100万円
    「大規模半壊」の場合:50万円
  • 加算支援金…基礎支援金を受給できる世帯が「建設・購入」200万円
    「補修」:100万円
    「賃借(公営住宅を除く)」:50万円

*中規模半壊世帯は、上記の2分の1
*世帯人数は1人の場合は、各該当金額の4分の3の金額になります。
*もらったお金の使途は限定されていません。何に使っても自由です。
*前提として、被災者生活再建支援法には適用要件があります。その地域に、被災者生活再建支援法の適用がされているのかどうかを、内閣府のHP等で確認してください。例えば大雨による土砂崩れで家が半壊しても、同法の対象となる自然災害でないと、この支援金は受け取れません。

災害弔慰金・災害障害見舞金(災害弔慰金法)

遭遇した災害の規模、受給者には要件があります。

  • 災害弔慰金というのは、災害により亡くなった方がいる場合に、遺族が受け取れるものです。
    受給対象となる遺族は、配偶者、子、父母、孫、祖父母で、支給額は生計維持者が死亡した場合500万円、その他の人が死亡した場合は250万円です。
    災害関連死も含まれますので、避難生活の長期化等により亡くなった場合にも受け取ることができる可能性がありますので、災害発生直後でなくとも、災害により亡くなった方がいる場合は、自治体へ相談することをお勧めします。
  • 災害障害見舞金は、その災害によって一定程度の障害(両眼失明、要常時介護、両上肢ひじ関節以上切断等の重度障害)が残った人に支給されるもので、支給額は生計維持者が250万円、その他125万円となっています。

災害見舞金など

自治体独自の、見舞金、支援金、補助金などが支給される場合があります。
問い合わせるか、HP等でチェックしてください。

お金を借りる

災害援護資金貸付(災害弔慰金法)

  • 災害援護資金貸付制度の対象となる災害は、都道府県内で災害救助法が適用された市町村が1以上ある災害で、この災害により負傷または住居、家財に被害を受けた人が対象(ただし、世帯人数により所得制限あり)です。お住いの自治体に申請します。
  • 貸付限度額は、世帯主の1か月以上の負傷・家財の1/3以上の損害:150万円、住居の半壊:170万円、住居の全壊250万円、事情が重複する場合は金額が上がり、最大で350万円まで借りられる可能性があります。
  • 年率3%、ただし3年間は無利子(据置期間)、据置期間を含み10年で償還(返済)です。

災害復興住宅融資(住宅金融支援機構)

住宅金融支援機構による、被災住宅を復旧するための融資制度です。
地震等の災害で住宅が「全壊」、「大規模半壊」、「中規模半壊」または「半壊」した旨の「り災証明書」を交付されている人が、住宅復旧のための建設資金または購入資金の融資を受けることができます。

高齢者(申込時に満60歳以上)向けの特例があり、これによると、月々の返済は利息部分のみ、金部分については、ご自身が将来亡くなった時に、家の売却などを通じて一括返済することになります。家の売却金額がローンの残債より少なくても不足分が相続人へ請求されることはありません。毎月の返済負担を軽減できることがメリットですが、通常の復興融資の方が有利な場合が多いようです。

社会福祉協議会の貸付

様々な貸付制度がありますので、問い合わせてみてください。

その他

公費解体

自治体が国(環境省)に申請して利用できる制度です。公費解体の利用があるかどうか、自治体に確認してください
原則全壊の建物が無償解体・撤去の対象となります(対象が広がっている可能性もあるので、必ず情報をチェック)。
先に自費で解体しても、費用償還の対象になることが通常のようです。

税金等の減免

所得税の減免については、災害減免法による支払猶予・還付、雑損控除による救済があります(確定申告が必要)。税務署や税理士さんにご相談ください。
市税(市民税・県民税、固定資産税、国民健康保険税)国民年金保険料医療費の減免を受けられる可能性もありますので、お住いの自治体の窓口へ個別に相談してください。

被災ローン減免制度(自然災害ガイドライン)

住宅ローン等を借りている被災者が、破産手続きなどの法的な倒産手続によらず、銀行などの金融機関との話し合いにより、ローンの減額や免除を受けることができる制度です。
自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」により、住宅ローンなどの免除・減額を申し出ることができます。
災害救助法が適用された自然災害により被災した、個人または個人事業者が対象です(法人(の債務)は対象となりません)。
金融機関の同意が必要なので、必ずしも免除や減額してもらえるわけではありません。利用したい場合は金融機関に問い合わせてみましょう。

債務整理の方法には、破産手続、個人再生手続等、法的な手続方法もあり、どのような手段を選択するかを含め、弁護士に相談することをお勧めします。

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