養育費の額は,義務者(養育費を払う側)と権利者(養育費を請求する側)の収入によって定まります。
ここでは,額の決め方についてご説明します。
養育費算定の基本的考え方
義務者(養育費を支払う側)が全ての子を養育していると仮定して子の生活費を求め、子の生活費を義務者・権利者双方の「基礎収入」の割合で按分し,義務者が負担する養育費の額を算定します。
基礎収入
「基礎収入」とは,総収入(税込収入)から,公租公課,職業費及び特別経費を控除した額で,養育費を算定する基礎となる収入のことをいいます。
*「総収入」については後述します。
*公租公課,職業費及び特別経費がそれぞれどのようなものかという点については,ここでは割愛します。
基礎収入は通常、総収入に統計データをもとにした基礎収入割合をかけて算出します。
基礎収入=
- 【給与所得者の場合】総収入×0.38~0.54(高額所得者の方が割合が小さい)
- 【自営業者の場合】総収入×0.48~0.61(高額所得者の方が割合が小さい)
子の生活費
子の生活費を算出するため、生活費の指数を用います。
子の生活費の指数は,成人の必要とする生活費を100とした場合の子の生活費の割合で,子の標準的な生活費の指数は,親を「100」とした場合,年齢0~14歳までの子については「62」,年齢15歳以上の子については「85」とされています。
これを用いて、子の生活費の額は、以下のように計算します。
養育費の額
義務者が負担すべき養育費の額は、子の生活費の額を、義務者と権利者の基礎収入の割合で按分して求めます。
子の生活費×(義務者の基礎収入/義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
具体例
子の生活費の額
- 15歳未満の子が2人いる場合は,
子の生活費=義務者の基礎収入×((62+62)/(100+62+62)) - 15歳未満の子が1人,15歳以上の子が2人いる場合は,
子の生活費=義務者の基礎収入×((62+85+85)/(100+62+85+85))
で計算できます。
義務者が支払うべき養育費の額
養育費の額は、子の生活費を、義務者と権利者の基礎収入の割合で按分して求めますので、
たとえば,義務者の基礎収入が250万,権利者の基礎収入が100万,
15歳未満の子が1人,15歳以上の子が1人いる場合,
- 子の生活費=250万×((62+85)/(100+62+85))=約149万
- 義務者の負担すべき養育費の額=149万×(250/(100+250))=約106万(年額)
- 106万(年額)÷12=約8万8000円(月額)
*2人分です。子ごとの額の出し方はこちら
養育費・婚姻費用算定表
義務者が負担すべき養育費の額は,上記のような計算式によって算定されるのですが,実務では,標準的な養育費の額を簡易・迅速に算出できるようにするための「算定表」を使用しています。
平成15年4月,標準算定方式及びこれに基づく算定表が発表され,その後広く実務において定着してきました。
令和元年12月23日,その後の統計資料や制度変更に応じて内容が更新され,改定された「改定標準算定方式・算定表」が公表されました。現在の実務は改定された算定表に基づいて行われています。
総収入
算定表を使用するためには,権利者と義務者の「総収入」(税込み収入)を認定する必要があります。
給与所得者の場合
源泉徴収票の「支払金額」が総収入に当たります。
自営業者の場合
確定申告書の「課税される所得金額」が総収入に当たります。
- ただし,これをこのまま総収入と考えるのが相当でない場合は,控除されたもののうち現実に支出されていない費用など(たとえば,現実に支払いがされていない専従者給与,社会保険料控除以外の各控除項目=基礎控除,青色申告控除など)を「課税される所得金額」に加算して総収入とする必要があります。
義務者の提出した資料が信用できない・資料が出てこない場合
- 従前の就労状況や同居時の生活実態,提出資料等を手掛かりに,諸事情を考慮して収入認定することがあります。
- 賃金センサス等を利用して推計することもあります。
義務者・権利者が稼働できるのに稼働していない場合
- 収入ゼロで扱うのは当事者間の公平に反することがあるので,賃金センサスなどの統計資料によって潜在的稼働能力に見合った収入によることがあります。
- どの程度の稼働能力があるかについては,これまでの就労歴や健康状態,監護している子の年齢等を考慮します。
養育費・婚姻費用算定表はこちら(裁判所HP)