「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」の違い

配偶者短期居住権とは

配偶者短期居住権は,被相続人が所有する建物に居住していた配偶者が,引き続き一定期間,無償で建物に住み続けることができる権利です(民法1037条)。

成立要件

・被相続人の配偶者
相続開始の時に,被相続人が所有する建物に無償で居住していたこと

存続期間

配偶者短期居住権の存続期間は,相続開始時から,

  1. 遺産分割により居住建物の帰属が確定した日
  2. 相続開始時から6カ月を経過する日

上記1,2のいずれか遅い日までです。

つまり,被相続人である夫が死亡した時に,夫名義(夫との共有の場合を含みます)の自宅に住んでいた妻は,遺産分割まで(遺産分割が終わっても最低6か月は)その建物に無償で居住することができる,ということです。

居住建物が配偶者以外の者に遺贈されたり,配偶者が相続放棄をした場合でも,居住建物取得者が短期居住権の消滅の申入れをした日から6カ月を経過する日までは居住できます。

配偶者短期居住権に関する規定は,令和2年4月1日から施行されます。

配偶者居住権と配偶者短期居住権の違い

 配偶者短期居住権は,配偶者が一定の要件を満たせば法律上当然に取得できる権利です。

一方,配偶者居住権は,これを設定する遺言(遺贈)があるか,遺産分割によらなければ,配偶者はこれを取得できません。相続が開始すれば当然に取得できる権利ではないので,注意が必要です。

★ 配偶者居住権と異なり,配偶者短期居住権は,登記することはできません。万が一,建物が第三者に譲渡されてしまった場合には,その第三者に対して,配偶者短期居住権を主張することができません。

★ 配偶者居住権の場合,配偶者は居住建物全部の使用ができますが,配偶者短期居住権の場合は,生前一部しか使用していなかったのであればその一部分のみ無償で使用できます。