寄与分の主張~私の貢献を評価してほしい!

亡くなった方(被相続人)に私はこれだけ尽くしてきたのだから,それを遺産分割の場でも評価してほしい,と思うことはありませんか。

たとえば,父が残した財産は私が一緒に家業を盛り立ててきたから増えたのだ,とか,私が長年母の介護を担ってきたから母の財産は維持された,などの理由でその分遺産を多くもらいたいと主張する場合です。

「寄与分」とは

「寄与分」というのは,相続人が被相続人の遺産の維持または増加について身分関係や親族関係から通常期待される以上の特別な貢献をした場合に認められるものです。

認められるためには,

  1. 相続人自らの寄与行為が存在すること
  2. 寄与行為が「特別の寄与」と評価できること
    「特別の寄与」というのは,被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待される程度を超える貢献であることを言います。
  3. 被相続人の財産の維持または増加があること
  4. 寄与行為と被相続人の財産の維持または増加との間に因果関係があること

が必要です。

類型として,

  • 家業従事型
  • 金銭等出資型
  • 療養看護型
  • 扶養型
  • 財産管理型

などがあります。

相続法の改正により,「相続人ではない者」の貢献を考慮する制度ができました。→別記事(特別寄与料の制度(概要))をご覧ください☺

寄与分が認められると,どうなるのか?

被相続人が相続時に有していた財産の価額から寄与分額を控除した「みなし相続財産」に各相続人の相続分を乗じて相続分を算定し,その上で,寄与相続人については,この相続分に寄与分を加えた額がその者の具体的相続分となります。

つまり,寄与分額を引いたものを相続人間で分け,寄与者には寄与分額をさらに足します。寄与分が認められると,寄与者の相続する額が増えることになります。

寄与分を定める手続

それでは,寄与分を主張するためには何をすればよいのでしょうか?

寄与分は,まず,共同相続人全員の協議で定められますが,協議が調わないときは調停を行い,調停不成立の場合は家庭裁判所の審判によります。

つまり,話し合いで決まればよいが,そうでない場合は裁判所で調停をし,調停での話し合いによっても成立に至らない場合は審判になるということです。

「遺産分割」調停の中で,自身の寄与分の主張をしていくことも一つの方法ですが,遺産分割の話し合いは感情がもつれていることが多く,そう簡単に相手方が認めてくれることは少ないです。別途「寄与分を定める処分の申立を行っておかないと,家庭裁判所では寄与分の審判ができません。
寄与分を定める処分の調停は,遺産分割の調停事件が係属している裁判所に申立てをします(遺産分割調停事件が係属している場合)。両調停は併合して行われます。

家庭裁判所の調停では,「寄与分主張整理表」というのを作成して提出することが多いです。「寄与分ツール」と言ったりしますが,類型ごとのフォーマットが裁判所にあり,当事者は「この表に記載してください」と紙を渡されます。自分が何をしたから,どうして被相続人の遺産が増えた(減らさずに済んだ)のかというようなことを,記載するわけです。

また,その主張を裏付ける資料も必ず提出します。

つまり言っているだけではだめで,証拠資料が必要になるということです。なければ,寄与分の主張は認められないことになってしまいます。

自分の寄与分を主張する人は,自らが証拠によってその事実を証明する必要があります。

寄与分の主張をする人の主張に反論のある人は,整理表に反論の主張を記載したりして,整理表を作っていきます。

寄与分に関する審理は,相続人の範囲,遺産の範囲,評価が決まってから行われます。遺産分割の話し合いの中で,いきなり寄与分の話を先にすることはしませんので,この手順は覚えておいたほうがよいでしょう。

寄与分の評価時期

寄与分の評価時期は,相続開始時点です。

遺産を分割する際は遺産分割時を基準としますので,寄与相続人がいる場合は,相続開始時と,遺産分割時の2時点の評価が必要となります。(ちなみに,特別受益を主張する者がいる場合も2時点評価が必要になります。)

つまり,遺産分割時に存在する財産については「相続開始時」と「遺産分割時」の評価が,特別受益物件については「相続開始時」の評価が必要となります。

寄与分の算定

寄与分の算定方法としては,

  1. 相続財産全体に占める寄与分の割合を定める方法
  2. 寄与分に相当する金額を定める方法
  3. 相続財産のうちの特定物をもって寄与分と定める方法

があります。一般に療養看護の寄与分は,2の方法で算定されます。

寄与分の額がいくらかは,寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情をしんしゃくして決定します。

寄与分の評価は困難なことが多いです。疎明資料も自分で揃えて提出しなければならないなど,証拠集めも困難なことが多いでしょう。そう楽に認められるものではないですが,そのことを理解したうえで主張をしていく必要があるということになります。
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