放置できない 空き家

マイホームを手に入れた親世代の高齢化に伴う,子供との同居,施設への入所,死亡などにより,人が住まなくなった家が増加しています。

放置するとどうなる

住まなくなった空き家を放置しているとどのようなことが起こるでしょうか。

人の住んでいない家は急速に老朽化します。台風などで家が傷んでも修理されないままになり,周囲に迷惑をかけたり危害を及ぼしたり,ともすると建物倒壊の危険すら生じます。景観の悪化や,不審火・放火,犯罪への利用のおそれなども出てくるでしょう。建物の不動産価値も下落してしまいます。

空き家の所有者は,建物が原因で周囲に危害を及ぼした場合,責任を問われる可能性があります。民法に規定する土地の工作物責任です(民法717条)。空き家の所有者は,建物に起因する事故で,建物の設置または保存に瑕疵がある場合,自己に過失がなくても責任を負わなければならないことになります。「瑕疵」というのは,通常有すべき安全性を欠いていることです。この所有者の責任は無過失責任となっています。つまり,過失がなかったことを立証しても責任を免れることができないので,要注意です。

空家対策特別措置法

平成27年5月26日から「空家対策特別措置法」が完全施行されました。

それまでは,放置された空き家が周囲に損害を与える危険性が高い場合でも,自治体は危険な状態の排除のために有効な手をうつことができず,不十分でした。

この法律により,自治体は以下のことが行えるようになりました。

  • 調査及び立ち入り
  • 固定資産税情報の利用
  • 助言又は指導
  • 勧告
  • 命令
  • 行政代執行

これまで所有者の同意がなければできなかった調査立ち入りができることになりました(空家9条)。
また,市町村の税務部局が保有している固定資産税の納税者に関する情報等を,内部利用することができるようになりました(空家10条)。これにより,所有者等を突き止めやすくなったといえます。

そして,調査等により,次のような状態になっていると認められると,「特定空家等」(2条2項)に認定することができます。
・倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

「特定空家等」に認定されると,市町村が所有者に対し,除却,修繕その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとるよう助言又は指導をすることができます(空家14条1項)
そして,上記助言や指導をした場合に,なお状態が改善されないときは,その者に対し,必要な措置をとることを勧告することができます(同2項)。この勧告を受けると,土地にかかる固定資産税の優遇措置を受けられなくなってしまうため,土地の固定資産税が約6倍になってしまいます。
勧告を受けてもなお改善がみられないと,市町村から所有者に対して命令がなされます(同3項)。この命令に違反すると50万円以下の過料が課されます(空家16条1項)。
命令を受けた空き家に改善が見られない場合には,市町村が所有者に代わり対処できることになりましたが(行政代執行)(空家14条9項),かかった費用は後に所有者に請求されます

適切な管理,活用,処分の必要性

以上みてきたように様々な不利益がありますので,空き家となった不動産の所有者は,これを適切に管理する必要があります。遠方で,事故で管理することが困難な場合は,管理代行サービスを利用するという方法もあります。二宮町では,シルバー人材センターでも空き家の見回り事業を行っていますし,ふるさと納税の返礼品にもなっています。

もし,今後も利用する予定のない家屋であれば,売却を検討されることをおすすめします。 特に,その空き家が所有者の「実家」である場合,思い出がある,遺品がある,仏壇がある,なとの理由でなかなか売却に踏み切れない事情があることも理解できます。ですが,心理的な要因がストッパーとなる一方で,建物には毎年固定資産税がかかり,管理費用がかかり,建物はさらに老朽化していきます。所有者が亡くなればさらに相続が発生します。
売却に困難が伴う場合もあると思いますが,町の「空き家バンク」に登録をしておくのもひとつだと思います。

空き家の売却について,譲渡所得税3000万円特別控除の制度には要件があります。詳しくは税理士にお尋ねいただけるとよいと思います。

その他,空き家を賃貸物件として利用する方法もあると思いますが,リフォーム費用などのコストと,回収のリスクなど,検討すべきことは多いと思います。

あなたの空き家は今どうなっていますか?

空き家の不動産の名義が,亡くなった所有者の名義のまま,ということもあります。
その場合,相続人を探し出し,相続人間で遺産の分割をする必要があります。
相続人調査だけでも大変な作業になることがあります。

相続放棄をしても,必ずしも管理や責任から免れることができるとはいえません。 民法第940条は、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで,自己の財産におけるのと同一の注意をもって,その財産の管理を継続しなければならない。」と定めています。
つまり,相続放棄をしても,誰も所有者がいなくなった空き家について,責任を問われる可能性があるということです。

ではどうするか?

被相続人の遺産を管理してもらい,最終的に国庫に帰属させるためには,「相続財産管理人」を選任することになりますが,選任を裁判所に申し立てる際にかなりの額の予納金を収める必要があります。被相続人にその他にも遺産があったり,不動産が売れてお金ができたりすれば,その予納金は返却されることがありますが,何の価値もない空き家しか遺産がなかったということになったりすると,そのお金は結局は申立人負担ということになります。それだけのお金をかけて管理人を選任するのか?と考えると,相続してしまった方が安い,ということにもなりかねません。ただし,相続するとその後,不動産の所有権は一方的に放棄することはできません。