断行しました~建物明渡しの強制執行

賃料不払で解除した賃借人が賃貸目的物から出て行ってくれないので、先日、建物明渡しの強制執行申立をし、断行手続に立ち会いました。
今日はその経験をコラムとして書いてみたいと思います。

訴訟をして債務名義(判決)を得たら、執行文を付与してもらい、送達証明書を取得して、執行官に強制執行の申立をします。
小田原支部では予納金は8万円でした。

申立後、執行官および執行補助業者さんと打合せをします。
明渡しの「催告」の日に、執行官、補助業者さんとともに債務者のところに行きます。債務者は1人暮らしで、催告時、在宅していました。
執行官と補助業者さんは中に入り、その際に部屋の様子などからだいたいの荷物の量や質を把握します。後日、補助業者さんが断行の日の搬出費用の見積もりを出してくれます。
催告日は公示書を掲示し、断行日及び注意事項等を記載した催告書を債務者に手渡すらしいのですが、中に入らなかったのでその場面は見れませんでした。

*明渡しの催告は、強制執行の申立があった日から2週間以内の日に実施すると規定されています(民事執行規則154条の3①)。
*催告において引渡し期限を定めますが(民事執行法168条の2①)、引渡し期限は原則として催告があった日から1月を経過する日(同条②)と規定されています。実際の断行日は、引き渡し期限の数日前の日を指定されるのが一般的のようです。
*明渡しの「催告」がなされると、不動産の占有者に変更があった場合でも引渡し期限まで承継執行文を要しないで強制執行を執行することができます(民事執行法168条の2⑥)。これを当事者恒定効といって、明渡しの催告の最も重要な効果です。

見積もりが出たら(荷物の量にもよりますが、だいたい何十万円という感じの金額になります)、今回は補助業者さんが直接債権者(依頼者=大家さん)本人のところへ行って、契約をし、委任状をもらい、見積もり費用の約半分程度を作業前に受領する了承をとりつけていました。

断行の日は、催告から約1ヶ月後・・・朝10時に行きました。
この日は補助業者さんが、搬出した荷物を運ぶためのトラックや、搬出作業をしてくれる方を手配してくれています。
作業員の方は・・・8人くらい?思ったよりたくさん来ました。
女性もいます。事案によっては、断行先の債務者が女性のこともあり、衣類や下着などを運び出すようなことも考えられるので、女性もいた方がよいということで作業員には女性の方もいるようにしているそうです。
作業員の方も作業は慣れているようで着々と進みました。
執行官は、債務者が不満を述べるので話を聞いていました。お話を聞くのが上手・・・。
債務者さんにもいろいろ事情はあるのでしょうが、賃料を払えないのでは、そこに住むことはもうできませんよね。

搬出する荷物は、催告の日に見ることができない状況だった2部屋に荷物が詰め込まれて大量にあり、補助業者さんが見積もった量より大幅に増えていました。

私は事前に補助業者さんから、最後までいなくても大丈夫と言ってもらっていたこともあり、途中で失礼しました。結局2時間くらいいたかと思いますが、2時間立ちっぱなしで足が棒・・・(体力ないです)執行官も補助業者さんも、一日がかりで体力あります。
結局、夕方になる前に明渡し完了となったとのことで、連絡をいただきました。
今回は、搬出作業は5時間くらいで終わりましたが、大きな一軒家の明渡し断行のときなどは、荷物が多く、夜の8時や9時まで作業するなんてこともあったそうです。

*今回は、大家さんが近所に住んでいたので、荷物の運び出しが終わったのち、大家さんに中を確認してもらい、ドアをねじ止めするなどして入れないようにして、引き渡し完了としたとのことです。ただ、大家さんが遠方に住んでいて、代理人しかいない場合、代理人は執行終了の最後までいなければならないのか?と考えたら、その日は大変だなと思いました。執行業者さんが鍵やさんを呼んで、鍵を変えてくれて終了(代理人がいなくても)にしてくれたりすればよいのですが。いた方がよいとなると、荷物の搬出作業は長時間に及ぶので、かなり大変になります(途中で抜けるくらいは可能でしょうが)。

債務者は、そこを追い出されると住むところがありませんが、持てる荷物を自転車に積んで、どこかへ行ったもよう。役場に行ったのかもしれません。正直心配ですが。
(たぶん、また後日、事務所や裁判所に苦情を言いにくるかもしれません・・)

補助業者さんは、断行が終了しても、搬出した荷物の目録(の下書き?)を作るとのことで、とても大変な作業だと思いました。
債務者の抵抗を受けることもあるでしょうし、単なる引越とは違いますので、執行補助者としての業者さんは大変な仕事だと思います。

もろもろのコーディネイトをして指揮をとる執行官さんも、さすが、という感じでした。
債務者が近隣に住む大家さんのところに行こうとしたときは、「先生、行ってください!」と指示が飛んできました。
私も追いかけて、「だめですよ、大家さんに言っても何もなりませんよ。だから、去年から、引越し先探してくださいねと言ったじゃないですか~。」とか何とか色々話しかけると、大人しく戻ってくれました。

搬出された荷物は、債務者がここに運んでくれと言うところがあれば、そこへ運んでくれますが、ない場合は、執行補助業者さんの倉庫で保管することになります。約1ヶ月保管された後、債権者から委任状をもらっている執行業者さんが換価競売の申立をし、通常は保管場所において競売の手続をする、債権者が競落したかたちにして処分するとのことです。
それまでに、債務者が保管場所に荷物を引き取りにくれば、引き渡してくれますが。(保管費用や処分費用は、債権者=大家さん負担です。)
条文としては、民事執行法168条、民事執行規則154条の2,同115条あたりかなと思います。

民事執行法 第168条
5 執行官は、第一項の強制執行においては、その目的物でない動産を取り除いて、債務者、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければならない。この場合において、その動産をこれらの者に引き渡すことができないときは、執行官は、最高裁判所規則で定めるところにより、これを売却することができる。
6 執行官は、前項の動産のうちに同項の規定による引渡し又は売却をしなかつたものがあるときは、これを保管しなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。
民事執行規則 第154条の2(強制執行の目的物でない動産の売却の手続等)
1 法第百六十八条第五項後段(同条第六項後段において準用する場合を含む。)の規定による売却の手続については、この条に定めるもののほか、動産執行の例による。
民事執行規則 第115条(競り売りの公告等)
執行官は、競り売り期日を定めたときは、次に掲げる事項を公告し、各債権者及び債務者に対し、第三号に掲げる事項を通知しなければならない。
一 事件の表示
二 売却すべき動産の表示
三 競り売り期日を開く日時及び場所
四 第百三十二条において準用する第三十三条の規定により買受けの申出をすることができる者の資格を制限したときは、その制限の内容
五 売却すべき動産を競り売り期日前に一般の見分に供するときは、その日時及び場所
六 代金支払の日を定めたときは、買受けの申出の保証の額及び提供の方法並びに代金支払の日
七 売却すべき動産が貴金属又はその加工品であるときは、その貴金属の地金としての価額

 

ものすごくお金はかかりますが、ようやく出て行ってもらえて大家さんはほっとしたのではないかと思います。

住んでいる側は、強制執行されると、いきなり荷物をすべて搬出され、外に出されて鍵を変えられるなどしてしまいます。
賃料を払えなくなった場合は、なるべく早くしかるべき手を打って、自発的に引っ越すなどしないと大変なことになります。

タイトルとURLをコピーしました